賃貸不動産経営管理士ってなに?


賃貸不動産経営管理士とは、賃貸不動産の管理や維持保全、入居者の募集や契約、クレーム対応やトラブル仲裁、賃貸不動産経営に関するアドバイス・・などなど、マンションやアパートといった「賃貸不動産」に関する管理業務全般を行うエキスパートとなります。

賃貸住宅管理業を営む場合、事業所ごとに1人以上の「業務管理者」を設置する義務があり、この業務管理者=賃貸不動産経営管理士となります(現在は賃貸住宅管理業の指定講習を修了した宅建士も業務管理者として登録可能ですが、これはあくまで暫定的措置であり、将来的には賃貸不動産経営管理士に一本化される可能性が高いと言われています)。

賃貸不動産経営管理士は、賃貸物件の入居審査から退去更新までの長期間にわたる業務を専門としており、入居者が安心して生活する手助けに加え賃貸物件のオーナーが資産を有効活用できるようにサポートするなど、重要な役割を担います。

以下で後述しますが、賃貸物件の増加や国家資格となったことで賃貸不動産経営管理士のニーズが増しています。


令和6年(2024年)賃貸不動産経営管理士試験の概要

令和7年賃貸不動産経営管理士試験の概要は、公表され次第お知らせします。

 試験日時:令和6年11月17日(日)13:00 ~ 15:00(試験の実施は年1回)

 受験料 :12,000円

 出題形式:四肢択一の50問

 受験要件:日本国内に居住する方であれば、年齢、性別、学歴等に制約はなく、不動産業に従事している必要もありません。

 願書申込:令和6年8月1日~令和6年9月26日(願書請求は9月19日 PM12:00まで)

 受験票 :令和6年11月上旬に郵送

 合格発表:令和6年12月26日(木)

試験当日は受験票を持参の上、12時30分までに所定の試験室の指定番号席に着席してください。受験票が無い場合は受験ができません。電子機器(携帯電話、スマートフォン、腕時計型情報端末、スマートウォッチ、パソコン、タブレットなど)は試験開始前に電源を切って封入袋に入れ、ご自身の座席の下に置いてください。携帯電話を時計代わりに使用する事もできません。同封入袋に封入されていない通信機器類の存在が判明した場合は不正行為とみなされ、直ちに退出、試験は無効とされます。

合格発表は一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会のホームページで合格者の受験番号を掲示し、併せて、合格者には合格通知書が送付されます。


賃貸不動産経営管理士試験の合格点・合格率

  受験者数 合格点 合格率
平成25年 3,946人 28点 85.8%
平成26年 4,188人 21点 76.9%
平成27年 4,908人 25点 54.6%
平成28年 13,149人 28点 55.9%
平成29年 16,624人 27点 48.3%
平成30年 18,488人 29点 50.7%
令和元年 23,605人 29点 36.8%
令和2年 27,388人 34点 29.8%
令和3年 32,459人 40点 31.5%
令和4年 31,687人 34点 27.7%
令和5年 28,299人 36点 28.2%
令和6年 30,194人 35点 24.1%

(平成25年~令和元年までの出題数は40問です)

令和6年度試験の受験者数は30,194人、合格者数は7,282人、合格率は24.1%、合格判定基準は50問中35問以上正解となりました。

平成28年に賃貸住宅管理業者登録制度の改正により賃貸不動産経営管理士の重要性が増したことで受験者が激増し、更に令和3年に賃貸不動産経営管理士試験=業務管理者の登録試験として国家資格となったことでまた受験者が増加しています。賃貸住宅管理業の需要の増加により、今後も30,000人前後を維持しつつ更なる受験者数の増加が考えられます。

合格点は宅建試験等と同じく「〇〇点で合格」とは定められておらず、難易度が高ければ合格点は下がり、難易度が低かったり受験者のレベルが高ければ合格点は上がる相対評価となります。国家資格1年目となった令和3年の合格ライン40点は異例と言えますが、安心して合格を勝ち取るには40点を目指す勉強が必要になってくるでしょう

合格率は年々下がっており、国家資格となったことで難化傾向が続くはずです。将来的には20%前後で落ち着く可能性が高いため、1年でも早く、少しでも取得しやすいうちに合格を勝ち取ってください。

令和3年から出題形式も賃貸住宅管理業法を重視した問題構成に固まってきた感がありますが、問題文の表現や切り口を過去の本試験問題から言い回しを変えて難度を高めたり、ひっかけへの対応力を問う問題が増加しています。

単純な条文知識だけでなく、問題対応力の強化を想定して今後の対策を立てる必要があり、インプットと過去問の繰り返しだけでなく、そのもう一歩先へ行けるかどうかが合否の分かれ目となってきています。


他の不動産資格との比較

  受験者数 合格点 合格率
宅地建物取引士 241,436人 37点 18.6%
マンション管理士 10,955人 37点 12.7%
管理業務主任者 14,850人 38点 21.3%
賃貸不動産経営管理士 30,194人 35点 24.1%


令和6年の例です。やはり宅建試験が圧倒的人気となっていますが、賃貸不動産経営管理士試験が宅建に次ぐ人気資格となってきています。宅建士、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士を合わせて『不動産四冠資格』とも言われ始めました。

合格率が示す通り、現在の難易度はマンション管理士>宅建士≧管理業務主任者>賃貸不動産経営管理士となっています。

・宅建士=
不動産取引の専門家(独立も就職も○)

・マンション管理士=
マンション管理のアドバイザー(独立向け)

・管理業務主任者=
マンション管理会社の従業者(就職向け)

・賃貸不動産経営管理士=
賃貸住宅管理の専門家(独立も就職も○)


宅建士と賃貸不動産経営管理士のダブル取得で、貸主と借主の両方をサポートする業務が可能になるという点は魅力的ですね。就職活動においても起業をするにしても大きな武器となるでしょう。

マンション管理士と管理業務主任者は「分譲マンション」を業務対象にしており、分譲マンション購入者で構成される管理組合側に立って助言やコンサルティングを行うことが主な業務となりますので、賃貸不動産経営管理士とは似ているようで少し毛色が異なります(もちろんダブル取得・トリプル取得で仕事の幅は広がります)。

同時受験の相性
  宅建士 マン管 管理業務 賃貸管理
宅建士
マン管
管理業務
賃貸管理


同じ年に、その試験の知識を持って一気に受験することでダブル合格以上を狙える相性です。同じ不動産関連資格なので「どれも相性は良い」と言えますが、特にはかなり試験内容が重複していて同時受験がおすすめとなります。

賃貸不動産経営管理士試験合格までに必要な勉強時間は「賃貸不動産経営管理士試験から入る」という方は少ないと思いますので「宅建やマン管・管業の知識があること」「法律の勉強の要領を掴んでいること」を前提とすると、宅建試験終了後の1ヶ月の勉強でも十分に間に合うと言えます。

賃貸不動産経営管理士試験だけの単独受験であれば・・1日でも早く勉強を始めてコツコツと全体像を掴み、1日10分でも良いので勉強を習慣化してください。そしてその知識の貯金をもって夏頃から少しずつペースを上げていけばきっと合格を掴めるはずです。


賃貸不動産経営管理士試験の問題傾向

【令和6年賃貸不動産経営管理士試験 問1】賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下、各問において「賃貸住宅管理業法」という。)に基づき賃貸住宅管理業者が管理受託契約締結前に行う重要事項の説明(以下、各問において「管理受託契約重要事項説明」という。)に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

1 賃貸人から委託を受けようとする賃貸住宅管理業者は、業務管理者を2年以上経験した別の賃貸住宅管理業者の従業員に委託して、管理受託契約重要事項説明をさせることはできない。
2 賃貸住宅管理業者は、相手方が独立行政法人都市再生機構である場合でも、管理受託契約重要事項説明をしなければならない。
3 業務管理者の管理及び監督の下で行う場合であっても、業務管理者ではない従業員が管理受託契約重要事項説明をすることはできない。
4 賃貸住宅管理業者は、自らの子会社の従業員に、親会社である自社が行う管理受託契約重要事項説明をさせることができる。
1(正)管理受託契約に係る重要事項の説明は、管理受託契約を締結しようとする賃貸住宅管理業者の従業員が行います。
2(誤)契約の相手方が賃貸住宅管理業者や宅建業者、独立行政法人都市再生機構など、管理受託契約に係る専門的知識や経験を有する者である場合、重要事項説明書の交付や説明は不要となります。
3(誤)業務管理者の管理監督の下で、その賃貸住宅管理業者の業務管理者ではない従業員に説明を行わせることもできます。
4(誤)上記1番と同様、管理受託契約を締結しようとする賃貸住宅管理業者の従業員が説明を行います(=親会社の従業員)。
令和4年賃貸不動産経営管理士試験 問46】 賃貸不動産経営管理士に求められるコンプライアンスに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1 日頃から人権問題に関心を持ち、人権意識を醸成して自らの専門性を発揮するとともに、貸主に対しては差別が許されないことを十分に理解してもらい、自社の他の従業員に対して積極的に指導を行うなどして、賃貸住宅管理業界全体の社会的役割の実現と人権意識の向上に努めるべきである。
2 賃貸不動産経営管理士は、関係する法令やルールを遵守することはもとより、賃貸住宅管理業に対する社会的信用を傷つけるような行為や社会通念上好ましくない行為をしてはならないが、情報化社会の進展を背景として、自らの能力や知識を超える業務を引き受けることも認められる。
3 管理業者が、貸主からの委託を受けて行う管理業務は法律的には代理業務にあたることから、管理業者はもとより賃貸不動産経営管理士も当事者間で利益が相反するおそれに留意する必要がある。
4 所属する管理業者から、賃貸不動産経営管理士としてのコンプライアンスに基づけば選択するべきではない管理業務の手法を要請された場合、その非を正確な法令知識等に基づいて指摘するなど、高度の倫理観に基づき業務を行うべきである。
1(正)賃貸不動産経営管理士は、人権意識の向上に努め、自らの専門性を発揮するなど賃貸住宅管理業界全体を考え行動します。
2(誤)賃貸不動産経営管理士が、自らの能力や知識を超える業務を引き受けることは許されません。
3(正)賃貸不動産経営管理士が代理行為を行う場合、利益相反行為に当たる自己契約や双方代理、そして代理権の濫用等に違反しないよう留意する必要があります。
4(正)賃貸不動産経営管理士は、正確な法令知識等に基づき、独立したポジションでのコンプライアンスを確立して業務を行うことが求められます。
令和2年賃貸不動産経営管理士試験 問39】 室内に発生した漏水に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1 給水管の保温不足による結露は、漏水の原因とはならない。
2 マンションなどでは、上の階が漏水の発生源であることが多いが、漏水が給水管からの場合、上階の部屋の給水を止めて発生箇所を特定することが必要となる。
3 配管からの漏水の場合、床下やスラブの埋設配管、壁の内側に隠れた配管等からの漏水の有無を調査するために一部の壁等を壊す必要があるときは、入居者への影響は避けられない。
4 漏水している水が雨水なのか、給水や排水管からの漏水かを特定することは、原因調査において重要なことである。
1(誤)結露は給水管を劣化させ、漏水の原因となります。
2(正)マンション生活では隣りや上下階の住人との協力関係も大切です。
3(正)配管からの漏水は原因調査のため壁を壊す必要がある場合もあり、入居者への影響は避けられません。
4(正)漏水している水の性質を調べることで、漏水原因や漏水個所の特定に繋がる可能性があります。
令和3年賃貸不動産経営管理士試験 問10】 原状回復ガイドラインに関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

1 壁クロスの毀損箇所が一部分であっても、他の面と色や模様を合わせないと商品価値が維持できない場合には、居室全体の張り替え費用は借主負担となる。
2 フローリングの毀損箇所が一箇所のときは、居室全体の張り替え費用を借主の負担とすることはできない。
3 畳の毀損箇所が1枚であっても、色合わせを行う場合は、居室全体の畳交換費用が借主負担となる。
4 鍵の紛失に伴う鍵交換費用は、紛失した鍵の本数に応じた按分割合による額又は経過年数を考慮した額のいずれか低い額による。
1(誤)壁クロスの毀損箇所が一部分であれば、借主の負担は最大でもその毀損部分を含む一面分までとなります。
2(正)フローリングの毀損箇所が一箇所であれば、借主の負担はその部分補修費用に限られます。
3(誤)畳の毀損箇所が1枚であれば、借主の負担はその1枚に限られます。
4(誤)鍵の紛失に伴う借主の負担はシリンダー交換費用となり、紛失した鍵の本数等は関係ありません。
賃貸不動産経営管理士試験の過去問をいくつかご紹介しましたが、

まず重要となるのは賃貸住宅管理業法ですね。宅建試験で言うところの宅建業法で、賃貸不動産経営管理士試験で最も多くの出題があります。内容も宅建業法と似た規定が多く、宅建試験の経験者であれば比較的スムーズに覚えられるはずです。

そして当然のように賃貸不動産経営管理士に関する問題も出題されます。ここも覚えやすく得点源とできるでしょう。コンプラ関連を含め、賃貸不動産経営管理士の業務については常識判断でも正誤判断がつきやすいところです。

残りの大半は③④の通り単純知識となります。宅建試験で言うところの法令制限、税その他を延々と覚えていく感じです。常識的に判断できる問題もありますが、多くは「単に知っているか勝負」となります。知っていれば簡単ですが文脈からの正誤判断が難しく、知らないと手も足も出ない問題となります。

受験生は皆、重要な賃貸住宅管理業法等は力を入れてくると思います。後は単純暗記による正確な知識量勝負となりますので、覚えては忘れ覚えては忘れを繰り返し、コツコツと合格知識を積み上げていってください。



以上、「賃貸不動産経営管理士」(賃貸不動産経営管理士試験)についてお伝えしました。

単身世帯や外国人居住者の増加により賃貸住宅の需要が高まっています。また賃貸住宅管理が高度化・複雑化していることで管理業務を管理会社へ委託するオーナーも増えています。

今後更に賃貸住宅の数が増えることが予想され、賃貸不動産経営管理士の活躍の場も広がっていきます。繰り返しとなりますが、合格率が20%前後となる前に(1000~2000円で)賃貸不動産経営管理士資格を取得してしまいましょう!

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